Side 1
01 - Iron Maiden (Steve Harris) - 4:01
Side 2
01 - Invasion (Steve Harris) - 3:07
02 - Prowler (Steve Harris) - 4:20
Produced by -----
released : 1979/11/09
Chart Position : --
UK : Rock Hard Record ROK 1
CD
released : 2002
USA : SANCTUARY / METAL-IS CSK 56882
■ 概要 ■
1970年代後半のイギリス。
当時はパンク/ニューウェイヴが流行の音楽であり、従来のハードロックは“オールド・ウェイヴ”なる蔑視の言葉を浴びせられていた。
しかし、ハード・ロックは死んではいなかった。
その中にいたのが、スティーヴ・ハリス(Steve Harris)少年だった。
1956年3月12日生まれの少年は、プロサッカー選手になる夢を捨て、大好きだったUFOやTHIN LIZZY、WISHBONE ASH と同じロック・ミュージシャンを志す。
パンク/ニュー・ウェイヴへの時代の反発もあったのだろうか、そのような少年はスティーヴ・ハリスだけはなく、ひとつのムーヴメントを起こし始めていた。
「サウンズ」誌(SOUNDS)の副編集長ジェフ・バートンは、ハード・ロックの流れを汲むこのムーヴメントにあえて“ニュー・ウェイヴ”の単語を用い、“New Wave Of British Heavy Metal”と名づけた。
(NWOBHM とかN.W.O.B.H.M. と略されることが多い)
“HARD ROCK” ではなく “HEAVY METAL” という新語、さらにオールド・ウェイヴと差別化するための “NEW WAVE” が付加されたことで、新鮮な響きを印象付けたのだろう。
もっとも、スティーヴ・ハリスはじめ、当の若者たちは、そんなムーヴメントを意識していたとは思えないが。
そして「サウンズ」誌にチャートを載せていたロックDJのニール・ケイ(Neal Kay)は、ヘヴィ・メタル・ディスコ「バンドワゴン・ヘヴィ・メタル・サウンドハウス」でアイアン・メイデンから送られてきた4曲入りデモテープをかけまくり、それは瞬く間に人気となって、サウンズ誌のへヴィ・メタル・チャートの1位となった。
(The Soundhouse Tapes の裏ジャケットには、ニール・ケイのコメントが書かれている。)
このデモテープを、ディスコの名称を名づけて自主制作でレコード化したものが本作品である。
このシングルはメールオーダー(通販)だけで1週間で初回プレス5000枚を売り切る人気となった。
それをより印象的にするため、バンドは15000枚を売り切ったと主張した。 (とウィキペディアにある。この件は、管理人wickermanは初めて聞いた。)
その後、HMVやヴァージンから1週間に2万枚ほどのオーダーがきたそうだが、マネージャーのロッドはそれをすべて断った。
このあたりの頑固さが、後のアイアン・メイデンに影響する礎といえようか。
■ レコーディング ■
The Soundhouse Tapes は、アイアン・メイデンのメジャー契約前のまさにデビューレコードであり、1979年の11月9日にリリースされた。
レコーディングは1978年の大晦日。ケンブリッジのスペースウッド・スタジオ。
スタジオ使用料は2日で200ポンドだったそう。
このときStrange World (※)もレコーディングされたが、クオリティに不満があるとして当シングルには収録されなかった。
また、バンドにはお金がなかったことからマスターテープは消去されてしまったようだ。
2週間後に手直しをしようとしたらもう消去されていたらしい。
しかし、それゆえに演奏ミスなどあるものの一発録りに近い荒々しさは、バンドの勢いを物語っていたと言えよう。
ウィキペディアによると、このレコーディング(あるいは、少なくとも同じ時期)のTransylvania のデモ音源も出回っているようだ。
しかし前述のようにこのときのマスターテープは消去されたようだから、同じ日のレコーディングではないと管理人は考える。
(※)
このStrange World は、1996年 Best Of The Beast の2枚組CD、アナログ4枚組LPボックスに初めてオフィシャル音源として登場。
2枚組CDにはStrange World とIron Maiden、LPボックスには3曲+Strange World といういわば「完全版The Soundhouse Tapes」ともいえる形で収録。
素晴らしい企画だ。
■ アートワーク ■
「The Soundhouse Tapes」のタイトルは、ロンドン北西部キングスベリーのバンドワゴン・ヘヴィ・メタル・サウンドハウスからとられている。
前述のニール・ケイ(Neal Kay)氏によるへヴィ・メタル・ディスコだ。
アートワークはそこでのギグの写真を用いたようだ。
エネルギッシュで、会場の熱気、バンドの勢いが伝わる素晴らしいものだと思う。
濃いオレンジ色も、インパクト大。
裏ジャケットにはニール・ケイによるライナーノーツ。
そこには1978年12月30日のレコーディングと書かれている。
通説では「大晦日のレコーディング」とされているので、30日~31日あるいは31日~1日のどちらかでスタジオ入りしたのではないだろうか。
それ以外は、スティーヴ・ハリスによる手書き文字。
独特のクセのあるスティーヴの文字は、アイアン・メイデンを印象付けるひとつのアイテムといっていいだろう。
■ 収録曲 ■
すべてスティーヴ・ハリス作。
どの曲も、EMI契約後にリリースされたものとは違う音源。 初期のアレンジの違いも楽しめるだろう。
前述のように、デモテープに収録されたStrange World は収録されていない。
■ メンバークレジット ■
Paul Di'Anno - Vocals
Dave Murray - guitar
Steve Harris - bass guitar
Doug Sampson - drums
デイヴ・マーレイのみがギタリストであり、唯一の4人組アイアン・メイデンとしてのクレジットである。
また、ダグ・サンプソンがドラマーとしてクレジットされている唯一のレコードでもある。
■ そのほか ■
スウェーデンのデス・メタルバンド、オペス(Opeth)はこのシングルに敬意を表したといえる「The Roundhouse Tapes」というライヴ・アルバムを2007年にリリースしている。
■ オフィシャル再リリース ■
公式に再リリースされたのは、1996年Best Of The Beast の収録曲としてである。
Best Of The Beast はバンドの「現在」から「過去」へとさかのぼる順番で構成されたベストアルバムであり、その最後をThe Soundhouse Tapes で締めくくるという感動的な構成であった。
4枚組LPボックス、2枚組CD、1枚ものCDの形でリリースされた。(収録曲は前述)
Strange World は初のオフィシャルリリース。
また、2002年、アメリカのMetal-Isレコードのリマスター再発のシリーズ(※)に封入されたエディのカードを6枚、6.66ドルと一緒に送ると、なんと「The Soundhouse Tapes」のレプリカCDがもらえる!という、すごいキャンペーンもあった。
「The Soundhouse Tapes」そのままの形でオフィシャルにCD化されたのはこれが唯一である。
当然ながら、日本盤はリリースされていないし、海外でもオフィシャルCDとして販売はされておらず、コレクターズ・アイテムの一つといえるだろう。
レコードのレーベルを模したCDのレーベル。
(※)
リマスターシリーズは、同じリマスター音源で、何度も再発されている。
英米でスリップケースだったり紙ジャケットだったり、とリリースのスタイルが違ったりもする。
日本盤も、リマスター再発された後、期間限定と銘打って、廉価版シリーズとして1500円でさらに再発を繰り返している。
(が、再発を繰り返しているので、期間限定というのは……苦笑)
■ ブートレグ ■
The Soundhouse Tapes はさまざまな形でブートレグ化された。(レアアイテムなので当たり前ですな。)
ジャケットはオリジナルを踏襲しつつも中身が様々なカラービニルであったり、ジャケットデザインごと変えてしまった7インチシングル、STRATUS(ストレイタス)のThrowing Shapes アルバムとカップリングした強引な(笑)CDなどもあった。
↑ カラーレコードの一例。様々なカラーレコードが存在する。
■ 本物の見分け方とは!? ■
まず、明らかにブートレグであるものは、Iron Maiden がフェードアウトしてしまう、というトホホなものだ。
私も、大学時代に買ってこれにはガッカリしたものだ。
今思うに、これは、「レプリカですよ。本物と音源が違うでしょ?」とあえてやっていたのだと思う。
ライヴなどのブートレグは昔からあるけれど、レプリカの場合は訴えられやすいのかな?と想像。
というわけで、当然フェードアウトなどしないこと。
もう一つ明らかに違うのは、ジャケットの作り。
横開きなのはレプリカ。
上開きで、かつ上側には円形のカッティング(ナイスデザイン!と思う)。
左右は外側から被せるように糊付けされている。
ちなみに、後にリリースされるRunning Free のシングルのジャケットも、同じようなデザイン。
また、レコード盤面の刻印(エッチング)に
*EG* SA LYN 7627-IT ROK-1-A
ROK-1-B LYN 7628-IT *EG* SA
がないといけない。
ブートレグでは、
ROK 1 A
ROK 1 B
のみ印字されているものが多いようだ。
ただし、ジャケットの作成は手作業と思われるので、実際には紙の切り方、張り方など多少の誤差があることも想像に難くない。
というわけで、僕の所有しているのは果たして本物? レプリカ?
詳しいアイアン・メイデン・マニアの方、どうか診断してください!
マーチャンダイズ・シートが同封されてます。
しかし、刻印がROK 1 A 、ROK 1 B だけなんで、やっぱブートレグかなあ………。
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